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Qの箱庭

ショートストーリー仕立ての毎日

姉と電話と物語

小さい頃はよく、頭の中だけで物語を作って暇を潰していた。

小説のようなものは書いていたけど、それとは別として、

完全に頭の中だけで作る世界。

だから登場人物とか設定とかが曖昧で、忘れてはまた作り直したりしていた。

 

そこに登場するのはいつも、純粋で子供っぽいところもあるけど

愛嬌があって可愛くて誰からも好かれるアイドルと

彼女が見せる隙を漬け込もうとする他者から彼女を守り続ける

大人のお姉さんだった。

多分両者とも、自分の憧れなんだろう。

可愛くもなりたかったし、お姉さんにもなりたかった。

 

大人になって物語を作る暇がなくなって、

彼女たちは必然的に眠りについていたけれど、

こないだお姉さんがふっと現れて、わたしに助言をした。

「大人なんだから、取捨選択をなさい」と。

 

 

それでそのお姉さんの存在を思い出しているうちに、

ふと自分の実姉の誕生日であることに気がついた。

たまたま当日に思い出したので電話をかけた。

 

 

「ひさしぶりー、相変わらず?」

「うん、こっちはなんにも。あんたは?」

「風邪ひいてたけどようやく治ってきた」

「そっか」

「そっちは雪降った?」

「んー、ちょっとだけ」

「こっちめちゃ降った」

「あー、日本海側って降るよねー」

「うんうん」

 

「特に用事はないんだけどさ。たまたま思い出したから電話した」

「そっかー、よく覚えてたね」

「褒めて!(笑)」

「よしよし(笑)」

「えへへ(笑)でも、複雑でしょ」

「そうねー、職場のひとも祝っていいのかわかんないって言ってた」

「そうだよね、そろそろ祝われたくなくなってきたよね」

「あんたも30なんてすぐ来るんだぞー」

「うん、なんかそろそろ笑えなくなってきた」

「もう結婚諦めてきた!(笑)」

「大丈夫、うちは兄ちゃんが結婚してるから」

「そうだよね、長男がいるからいいよね」

「うんうん。大丈夫だよ。もう祝われちゃえよ(笑)

 いいんだよ、生まれた日ぐらい祝われろよー!あ、おめでとう」

「(笑)ありがと」

「いまなにしてんの。誕生日の夜なのに暇なの」

「ドラマあるから観る」

「ふーん(興味ない)。あ、ごめん邪魔した?」

「いや、録画してるから大丈夫」

「そっか」

 

「あんたいつ帰ってくんの」

「んー。どうしよ。

年末忙しいし、年明けてしばらく経ってからかなー。」

「そか、たまには顔見せにきなよ」

「ほいほい」

 

「じゃーまた。そのうちなんかあったらかけるねー」

「ん、じゃーね」

 

 

一緒に暮らしてたのは姉の高校卒業までで、

それからわたしが卒業してからはずっとわたしは札幌にいて、

姉は大学卒業後地元に就職して。

家では大体なんでも共有していたけれど、

元々趣味も違ったせいで、今は共通の話題が天気とニュースしかない。

 

それでも、話すのが全く苦ではない相手というのは、希少だと思う。

 

 

理想のお姉さんは存在しない。

実姉はもちろん、わたしも到底その憧れのお姉さんにはなれそうもない。

理想だったはずの未来は、案外すぐにやってくる。

きっとわたしが思ってた30歳とは違う30歳になっている。

 

それでも毎日が曖昧で忘れたとしても、わたしはまた何度でも作り直して。

きっと子供っぽさは残ったまま、それなりのお姉さんになっていくのだ。

そうやってわたしは物語になっていくのだ。

 

なんて。

まるで私小説みたいなブログを書きながら夜は更ける。おやすみなさい。