Qの箱庭

ショートストーリー仕立ての毎日

丸亀製麺

丸亀製麺は職場から歩いて大体15分くらいのところにある。

あるけれど、家と全く別の方向に歩く事になるので、滅多に行かない。

 

でも今日は、職場からてくてくと丸亀製麺に向かっていた。

うどんが食べたかったというより、休まる場所が欲しかった。

 

 

精神的に不調だったのか体調が悪かったのか

どちらが先だったのか定かではないけれど、どちらも調子を崩して

特に精神的にふとしたことで落ち込んだりする状態が続いていて

今日もどうにか働いたけど、終わる頃にはなんだかすべてが嫌になっていた。

 

特別な理由はない。

周りの人は不調のわたしを本当に心配してくれたし、

だからこそ自分が嫌になってしまった、それだけだった。

 

 

てくてくと歩く、足取りは重く

でも止まったら動けなくなる気がして

口ずさむ歌と、何を注文しようかということだけで頭を塞いだ。

 

そして入店。湯気が立ち込めていた。

会計にいたおばさんが元気よく迎えてくれて、

わたしは受付にいたお兄さんに釜揚げうどんと温泉たまごを注文した。

温泉卵は割った時点から黄身が溶け出してきていて

気持ちも少しどろどろになった。

 

店でプッシュしていたタル鶏天ぶっかけの鶏天が

単品100円で売っていたのでそれも乗せて会計へ。

500円もしない注文で万札を出したけれどおばさんは笑顔のままだった。

 

 

端の席に座り、うどんをだしつゆにつけて食べた。

つゆは甘くて、優しい味だ、とわたしは思った。

その後、人格があるわけでもないつゆに優しい、という表現を使うのは

少し変かもしれないな、と思った。

甘いものは、どうして優しいのだろう。

 

会計のおばさんも、職場の先輩も、上司も、

いんたーねっと上の顔の見えぬ友人たちも

みんなわたしに甘くて優しいのは、どうしてだろう。

 

疑問に思いながらも、わたしはつゆの入った器に温泉たまごを流し込む。

甘さはまろやかさを纏って広がる。

どこかタオルケットにも似ている。

 

ああ、わたしはきっと、守られているのだ。

そしてわたしはきっと、守られているだけでは嫌なのだ。

 

 

鶏天は下味に柚子を使用しているらしく

さっぱりしていて少しだけ酸っぱい。

でもきっと、この酸味があるからさっぱりとするのだ。

甘いだけではきっと何か物足りない。

 

 

 

水を二杯飲んで、少しぼーっとして。

帰らなきゃな、と思い、店を出た。

 

外はすっかり真っ暗で、ひんやりとした風が吹いていて、

その酸味のような冷ややかさが、わたしを少しだけさっぱりさせた。

 

 

何も解決していないけれど、

気づけば11月も半ばを過ぎている。

何かを解決させなければならない。今年のうちには。

 

 

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今週のお題「年内にやっておきたいこと」〈2014年をふりかえる 1〉にさらっと便乗しました。