Qの箱庭

ショートストーリー仕立ての毎日

整理する生活

腰を痛めた。もう半月くらい前のことだ。

 

 

今までにないくらい痛くて、何もしていなくてもズキズキするので

次の仕事が休みの日に病院に行った。

結果、特に骨に異常はなし、筋肉疲労とのことだったので

湿布と痛み止めの薬をもらって帰った。

 

しばらくの間、湿布を貼って痛み止めを飲んでもまだ痛かった。

黙っていればなんともなくても、ふとお辞儀をしたとき、

物を取ろうとかがんだときに痛みが走った。

ただでさえ忙しいのに、仕事が全然捗らなくなって苛々して、

いろいろなものが溜まりに溜まってどんどん具合が悪くなっていった。

 

そして何故かちょうどそのタイミングで失恋をして、気分がどん底まで落ちた。

何も信じられなくなって、自分自身も信じられなくなって、

そして、もう捨ててしまおう、って思った。

 

何を、という具体的なものがあるわけではなかった。

何もかも捨ててしまって楽になりたかった。

 

 

そうして、

まずは自分の部屋と、財布の中身をきれいにした。

使わなくなったものを捨てて、今何があるかを把握して。

 

それから、思い込みを捨てた。

腰が痛いんだから今まで当たり前にできてたことができなくなったり

時間がかかったりしても仕方ない、それが今のわたしにとっての普通だ、

そう思うようにした。

 

最後に、職場の商品在庫の整理をした。

ちょうど棚卸の時期だったので、溢れかえっていたバックヤードの

中身をぜんぶひとつひとつ数えて確認して、まとめた。

 

そして整理する生活の中で、一緒に気持ちを整理していった。

 

どうしてこんなに仕事は溜まっていく一方なんだろう、と何度も

考えては頭から煙を吐いた。

わたしにとってあの人はどういう存在だったんだろう、と何度も

自分自身に尋ねては要らない想像をして泣いた。

 

そんな日々も、月が変わる頃、棚卸が終わる頃には

少しすっきりしていた。

特に結論が出たわけではない。

でも、片付けよう、と思えるようになった。

 

 

在庫も、気持ちも、必要なくなったものを少しずつ捨てよう。

必要なものは、大切にしまおう。

簡単に変われはしないと割り切れたときから何かが少しずつ変わっていく。

そうして気がつけば、腰の痛みは消えている。

 

どうして痛めたか、理由はわかっていた。

溜め込みすぎた仕事をどうにかしようと無理をして腰を捻ったのだ。

 

休息する時間が、体と心を整理する時間が必要だったから腰を捻ったのだ。

 

 

今ならそう思える。結果論ではあるけれど、

もしかしたら「何か」はもう既に解決したのかもしれない。