Qの箱庭

ショートストーリー仕立ての毎日

出口の見えるトンネル

渋滞で混むのが嫌だから、と

地元から札幌まで車で出かける時

我が家は必ず早朝に家を出た。

4時とか、5時とか。


札幌まではおよそ5時間。

その間当然眠いし、起きていると車酔いもするので

わたしは車が発進してから1時間も待たずに眠ってしまう。


目が覚めると何処かの峠にいるようだ。坂道が続いている。

途中にトンネルがある。

トンネルの中は薄暗いオレンジの照明が一定の間隔であって、傾斜も一定にあって、ラジオの音がぶつぶつ途切れる。

どこかそこだけ異空間な感覚がした。



出口があるのはわかっているのに、

何度も通ってきたはずの場所なのに

他に車はいない早朝、たった一台の車はこのままこのトンネルに飲み込まれてしまった。

あるいは、

既に別のどこかの世界に紛れ込んでしまった。


そんなふうな想像をすることがあった。

さほど長くないトンネルは、想像の途中ですぐに出口に着いてしまうのだけれど。





------

一ヶ月に一度、何かあったわけでもないのに

大体一週間くらい調子が悪くなる期間がある。


10日を過ぎた頃からひっそりと現れ、

20日を過ぎる頃になんとなく消える。



そのトンネルの中にいる間だけは

わたしの世界は異空間で、

すぐに自信をなくしたり自暴自棄になったり人の言葉を無駄に深読みしたりする。

本当は違うってわかっているのに

そんな自分を信じられなくなる。



出口があるのはわかっていても、

その中にいる間だけは逃れられない


そんな出口の見えるトンネルの、

出口がようやく見えたところ。




------

トンネルを抜ければ、札幌の街がうっすらと見えてくる。

それまでとは、地域が変わり、景色が変わり、纏う空気が変わる。

 

目的地は近い。