Qの箱庭

ショートストーリー仕立ての毎日

I don't know yet - ごはんですよによろしく

”I don't know yet”

DormirというアーティストのResurrectionという曲の歌詞から。めちゃくちゃ癒される曲。

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新しいことをはじめる。

ということに先駆けて、新しいことをはじめるときに思い出すことを思い出すために文章を書く。いつも思い出すのは、仕事ではじめてグロサリーを担当した頃のこと。(今は別の部門にいるけど)

一般食品部門、という名前だけでも何を扱ってるのかよくわからない部門は加工食品部門とも呼ばれていて、扱うのは加工食品、すべてだ。すべてというのは、生鮮食品以外すべてということで、砂糖醤油味噌等の調味料からレトルトご飯やボンカレーごはんですよの瓶やらサバ缶、カップ麺に袋麺、お茶の葉にコーヒー豆、ホットケーキミックスまですべてグロサリーの管轄だ。店の面積の半分はグロサリーである。

そこの担当としてお客様に商品の案内をしたりしなければいけないのだけど、まず案内してもらいたいのは自分だよってレベルでわからない。教えてもらってもなおわからない。目指しているのと違う通路に入ってしまったり、自分が与えられた担当列があったのだけど、その担当列ですら商品を聞かれて場所がわからなくなったりとか。

 

商品はわかるのに、場所がわからない。何度も行き来しているはずなのにまた迷子になる。それまで小さい部門でそこそこ仕事ができただけにショックで、自分はこんなにも何もできないのかと途方に暮れた。

最初だから売場の前出し(フェースアップともいう、奥に引っ込んでる商品を手前に出すこと)しててって言われて、まあどうせそれしかやらせることないんだよな、何もできない新人だし、ってひねくれた気持ちで前出しした。

 

前出ししはじめると、おお、醤油ってこんなに種類あるのか、とか、このネーミングウケる、って商品があったりだとか、ちょっと楽しくなってきた。ハーブの種類多すぎ!とか、思いながらもこういうハーブ聞かれることあるかもなあって思いながら知っていった。そのあたりで、あー、わたし何も知らなかったんだなーって思った。

そして、知ろうともしていなかった。だからこんなに発見がある。

 

気づいたら、めちゃくちゃ商品に話しかけてた。傍から見たら相当変な人種だろうけど。「あなた、ごはんですよっていうのね!わたしは今日から入ったきゅーいんがむ!よろしくね!」って、そこまでじゃないけど、そうか、こいつはこういう名前なのかー今日からわたし担当だから仲良くしようねって、そんな気持ちで前出ししてた。

 

まだ何も知らない。だからまずは仲良くなろう。そういう気持ちで接していると、

最初はわたしを迷わせていた商品たちがだんだんツンデレになってきて、「またお前かしょーがねーなー」って思ってくれるようになった。気がする。

それで接すれば接するほど迷わなくなってきて、発注する商品に愛着がわいてきて。

そこから仕事が好きになってきた。もちろん、わからないことをわからないだけ聞けって言ってくれた恩師である上司や、色々教えてくれた先輩たちのおかげでもあったんだけど、

自分が意識が変わったきっかけがそこであるのは確かなので、迷ったら

「まずは話しかけてみよう、仲良くなろうとしよう」って思うことにしてる。

人でも、ものでも、どんなに簡単な仕事でも。

自分が積極的に知ろうとすれば、学べることはけっこうあるし、わたしはそれが楽しいと思う。