Qの箱庭

ショートストーリー仕立ての毎日

入院日記3日目:krank(点滴)

11/7(木)

 

起きたら目が痛くなくなってて、まずはほっとした。2日連続で8時間以上寝て、後はびっしり目薬さしてたので、それで無事回復したらしい。よかったよかった。


朝は一瞬デイルームに行ったけど軽くネット見ただけで戻ってきた。
朝食の梅ふりかけ、若干心配だったけど普通に食べられた。梅が苦手で、基本的に食べないのでふりかけくらいなら食べられるのは発見だった。機会がないと挑戦しないので挑戦できてよかった。


朝食後、適当に1時間つぶしてデイルームへ。途中、先生が挨拶にきたときめっちゃファンデーション塗ってた…。身支度中すみませんと何度も言わせてすみません…。
(本来は入院中にメイクする必要はないんだけど、メイクしないと鏡を見る度に荒れた真っ赤な顔を見なきゃいけなくてテンションが下がるので、入院中は自分のテンションを上げるために簡単にベースメイクだけしてた)。

デイルームで、検査前の運動タイム。初日にLINE MUSICの無料体験を開始して「有機酸」というボカロPさんの曲をDLしたのと、退院したらカラオケに行こうと思っていたのが重なり、有機酸さんの曲って何がカラオケに入ってるかなあと思って調べて、krankという曲が入っていることを知ったので聴いてみる。例によってリズムに合わせてステップを踏んだ後、歌詞を追ってみる。

でも、歌詞を見ただけだとどういう曲なのかがよく掴めなかったので、動画を再生してみた。

 

www.youtube.com
点滴が印象的な病気・病人の曲で、何かぐっときてしまった。自分とは違うけど、点滴をつけている人が溢れているこの病棟内では、この曲はやけにリアルに、大きく響く。
薬で生かされているのは私も同じなので(今のところ毎日注射打たないと死んでしまう)、そこには少し反応もしてしまう。
曲の中の世界に入り込んでいたのもあってすごく悲しくて、泣きそうになりながら素敵な楽曲を脳に取り込んでいた。

10時45分ぐらいになったので部屋に戻り、CT検査の準備。
点滴を入れることになり、看護師のいずみさん(仮名)が点滴を持って病室に来る。が、「大事な忘れ物をした」らしく一度ナースステーションに戻ってもう一度来る。
この時点で何となく大丈夫かなあ、と思ったけど、案の定大丈夫じゃなかった。

少し前まで看護学校に通っていたらしい新人?(直接聞いたわけじゃなくて、廊下から聞こえた会話の内容なので本当かどうかは知らない)のいずみさん、点滴を入れるための血管をめちゃくちゃ入念に探ってくる。
「ちょっと痛いですけど大丈夫ですからねー」と私を不安にさせないように明るく声をかけてくれるんだけど、私より刺す側のいずみさんの方が緊張してて不安そうだった。
あまりにも何度も何度も確認するものだから、途中から緊張どころか笑えてきてしまった。

(一体どんだけ確かめるんだ…w)

そして、散々確かめて針を入れたのに血管に刺さってなくて、もう笑いをこらえるのに必死だった。
思わず「外すんかい!」って心の中でツッコミ入れてた。
いずみさん、明るくて一生懸命なんだけどこれ以外にもちょっとドジというか、不器用というか、要領良くないけど頑張ってるみたいな感じが随所に見られて、めちゃくちゃ可愛いなと思った。この人は推せる。
(ちなみにこの「いずみさん」という仮名は、ドラマ「ナースのお仕事」の主人公の朝倉いずみっぽかったので採用しました)

痛み自体は想像してたほどじゃなく、普段の採血のちょっと痛い版だったので思ったより平気だった。


で、検査室まで移動になったのだけど、先客がいるとかで急遽デイルーム待機に。
その後も2回くらいいずみさんに「ごめんなさいね、もうちょっと待っててくださいねー」って言われて謎の時間が生まれる。
暇になった時間に、ふと自分に繋がっている点滴を見てkrankを思い出した。もちろん自分に繋がっている点滴は命に直結するようなものではないけど、思い出して少しアンニュイな気分になった。


デイルームで待っているとよくデイルームに現れる(そして私に話しかけてくる)おじいさんがやってきて、「やー、めんこい点滴だなあ。俺なんかもっと大きいのを何本も打ってな…」と点滴マウンティングされた。
マウンティング云々よりも点滴でマウンティングするっていう現象そのものが面白すぎるし、自分で作った点滴マウンティングという用語がツボに入って「これ絶対後でツイートしよう」と思った(結局しなかったけど)。
その後出会った掃除のおばちゃんも「ずいぶんちっちゃい点滴だね」とか「ずいぶん減りが遅いね」とか言ってたので、やはりここでは、点滴のサイズというのは重要なものらしい(サンプル数2)。大きい方がいいのであれば、大きくなれるように頑張…いややっぱ全然頑張りたくない。ていうか勝負じゃないし。

しばらくして、検査室が空いたらしくいずみさんに連れられて移動。エレベーターでマスクをくれたんだけど、あれ、さっき造影剤で体熱くなるって言ったたよな…?こんなのつけてたらめっちゃ熱くならない…?大丈夫…?って思った(申し訳ないので一応もらった) 。
1階にいろんな患者さんいるから一応って言われたけど、エレベーター降りたらガラガラで、結局何の意味もなかった。すれ違ったの多分5人ぐらいだと思う。
あと、いずみさん、エレベーターが来る間際にナースステーションの他の人達に「CT室行ってきます」って声かけたの、言うの忘れてて慌てて言ったっぽくてやっぱり可愛いなって思った。やっぱりいずみさん推せる。

検査室ではそんなに待たずに呼ばれ、1回造影剤なしで撮ってみたところでいずみさんが駆けつけてくる。
「なんかポケットに携帯みたいなの入ってます?」
あっ活動量計ポケットに入れてた…完全に存在を忘れてた、ごめんなさい…。
改めて撮って、今度は問題ないということで造影剤を入れられる。いきなり熱くなるからびっくりしないでって言われたけど、想像とは全然違う、体の内側から燃えるような熱さがあって、「うわ、え?ちょっ、口熱い、お腹も熱い、待ってなにこれ、え、ちょっ…」って軽くパニックになって、コントロールがきかずに熱が上がって苦しくなることが怖くなって、嫌だ、怖い、怖いって心の中で連呼して、苦しくなったけどいやこの苦しいやつは副作用じゃなくて精神性のやつだと思い直して、どうにか耐えてもう1枚撮って終了。
食塩水注入。ゆっくり火照りが静まり、いずみさんに口の中が熱いと言ったら、口の中には細かい血管がいっぱいあるからと説明される。点滴のスピードが東京フレンドパークミニゲームだとタイミングを合わせられないほどの超高速になり、いずみさんに点滴が終わったら呼んでくださいと言われたので終わる前に急いで点滴の記念撮影した。

 

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してたら夢中になってていつの間にかなくなってて、いずみさんに来てもらう頃にはちょっと逆流してた。
「痛かったでしょ」「いや…」「ちょっとは痛かったでしょ」「まあ、ちょっとは…」いずみさんは一体何を確認したかったんだろう。そんなに痛みの程度を確認せんでも。

 

とりあえず点滴抜かれて、お昼だったのでそのまま血糖測定と注射と昼食になったのだけど、いずみさん、測定結果を聞きつつ注射を持ってきつつ昼食のお盆も全部同時に持ってきたのでそんな一気に全部やらなくても、とちょっと笑ってしまった。お茶目で雑ないずみさん推せる。(3回目)

昼食後、1時間くらいごろごろして、さて読書するかと本とメモ用のノートを開いたらリハビリのお兄さんが来た。最高のタイミング…。
お兄さん、病室で私の靴を見るなり「あ、ニューバランスが。いい靴だ…。」って言ったのでちょっと面白かった。それ気づいて褒める人初めて見たなあ。ランニングシューズの有名メーカーって知ってる人ほとんどいないし。(確かに1万円以上する靴なんだけど、私のはスポーツ用品店で半額セールをやっていたときに買ってもらった)(ランニングしようと思って誕生日に買ってもらったのに1回もランニングしてない)
お兄さん、何かスポーツやってる人なんだろうか。エアロバイクも欲しがってたし。

タオルなどを持ってリハビリ室へ。
エアロバイク、負荷(目標心拍数)軽くしてもらったのに全然できない。座高や負荷や上がらない心拍数と戦って5分経過。
ていうか、最初頑張らないとペダルが重くなりすぎて詰む。何これ…wそして座面調整するとリセットされて軽くなりすぎてペダルが勝手に回るw今度は軽すぎて無理!w

「この機械スパルタすぎません?」
「何か機械に操られてる感じがするんですけど…」

とか愚痴をこぼしながら漕ぐ。お兄さんもお兄さんで「心臓に足が追いついてない」とか言うのやめてほしいw「足だけおばあちゃんなんです」とか「上半身と下半身で年の差があって…」とか言わなきゃいけなくなるからw
まぁでも、冗談言ったら笑ってくれてよかった。誰かが笑ってくれると私も楽しいし。

 

キャンディーからカフェラテになって、バナナになる消費カロリーを見てたからだったかな、水の硬度の話になったのは。
「まぁ入院中はカフェラテ飲めないんですけどね」
「そっか、水とお茶だけか…」
「でも、水も突き詰めると楽しいですけどね。一時期いろんな硬度の水を飲んでたことがあって」

(↑この話、前にブログに書いてた気がすると思って探してみたら出てきた。このブログですらなかったしもうすぐ6年前の記事だし時間の流れに泣きそう)

http://quest0210.hatenablog.com/entry/2014/01/12/142829

最終的に軟水しか飲めなかった話をして、お兄さんはボルヴィックが好きだけど、この町では売ってないという話をした。


「コンビニしか行かないから、もしかしたらスーパーとかにはあるかもしれないけど…」
「そっか、じゃあスーパーとかにしかないのかも。私飲まないからチェックしたことなかったです」

それから、旭川にはあったと言うので旭川出身なんですね、と言う話をした。私が昔旭川医大に入院していたと言ったら、隣の専門学校卒という返事が。

「あ、でも全然時期かぶってないですよね、入院してたの11歳の時なら」
「まぁそうなんですよね…」

あれ、なんだか、年齢差を感じるんだけど…。時間の流れに泣きそう…。

エアロバイク、後半は大体コントロールできてて無事終了。筋肉痛だけが不安と言いつつお兄さんに送ってもらう。その後はお風呂の予定だったけど、浴室が空いてなかったのでシャワールームへ。初シャワールーム。何か絶妙な狭さで、懺悔室っぽかった(※行ったことないのでイメージです)。

シャワー後は眠くて、ぼーっとしてたけど、一応1階に飲み物だけ買いに出た。自販機に「一番上の段にある商品は下のボタンで買えます」って書いてあったから下のボタンを押して選んだら違うやつが出てきた。まあ出てきたDAKARAのやさしい麦茶も嫌いじゃないからいいけど…。
悔しいのでもう1本、今度は上の通常のボタンを押したら普通に目的のウーロン茶が出てきた。最初のは罠だったのか…なるほど…とつぶやきながら、1階外来の通路を散歩して部屋に戻った。
誰もいない外来待合室、新鮮だった。いつもは人しかいないのにな。

あと、CTの検査結果を聞いた。先生に「画像見る?」と聞かれたので喜んで「はい」って返事。こういうの見れる機会なんて中々ないもんね。どこかで生かせるかもしれないし、未知の体験は積極的にしようと思ってしまうのがライターの性。
画像で膵臓の位置を確認。ちょっと小さめだけど概ね問題なく機能しているとのこと。
それから、一番知りたかった、自分からインスリンが出ているかどうかについては東京の方からの結果待ちとのこと。へー、そんな遠くまで行ってたのか、昨日の寝起きに採られた私の血液…。


夕食はこの入院生活一の外れだった。魚の煮付けなのに味がしないってどういうことなの…。(何とか完食はした)
夕食後はまたNHK見て(シニアラグビークラブの話が面白かった。シニアの人達が若い子たちを指導し、若い子がやがてシニアクラブに所属することで、プレイヤーを循環させてラグビーというスポーツ全体の裾野を広げる話、だったと思う)、歯磨きして、デイルームへ。

窓の外を見たら雪が降っていて、記憶が正しければこれが初雪なのだけれど、初雪かどうかを確認するために、それだけのために母に電話した。

「ねえ今降ってるのって初雪?」
「そうだよ。ところでどうしたの?」
「ごめん用件それだけ!」

小学生みたいなテンションだった。

 

病院から見る初雪。30歳。
初雪なんて北海道民からしたら珍しいことでも何でもないけど、入院中に見た初雪のこと、多分一生忘れないんだろうな。

 

あすけんの記録やSNSチェック、あとpplogに今日の出来事を2回書いたら(1回消えたので書き直した)20時になったので病室に戻る。
そして重い腰を上げて日記を書き始めたのだけど、気がついたらがっつり6ページ半書いてた。所要時間2時間。消灯時間大幅オーバーで、現在時刻22時17分。