Qの箱庭

ショートストーリー仕立ての毎日

捜索隊の定期活動報告=(「短歌の目」第4回)

こんにちはこんばんはきゅーいんがむです。

お題自体はけっこう早めに見て詠んでみるのに、詠んだあとになってちょっと時間置いてもっかいかんがえてみようかな、もっとちがう良い歌浮かぶかな、なんてやっているうちにいつも締切ギリギリになってしまいますすみません。主催のid:macchauno様には頭が上がりませんいつもありがとうございますお疲れ様です。

tankanome.hateblo.jp

 

そんなわけで、第0回からはじめて早5回目、お題に沿って短歌を詠む

題詠短歌の会「短歌の目」、今回も参加いたします。

いつも引用スターや感想ありがとうございます、今回ももしお気に入りが見つかれば引用スターいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

 

 

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1.青

瑠璃色の愛は群像 碧眼の麗し君は何色の青*1


2.梅

「仰梅の候、パチンコ屋で初デェト」まるでCR梅物語


3.傘

あなたがいない日ばっかり雨だから こっそり使う黒の置き傘


4.曲がり角 

曲がり角 その先にまた 曲がり角 その先左折 王子様どこ


5.しそ

梅しそわさびおにぎりってあるけれど 食べれるの米部分しかない


6.紫陽花

腫れた目を化粧で隠すくらいなら 雨の似合う紫陽花になりたい


7.つばめ

「スワロー」と祖父が英語でつばめ呼ぶ 「スワ郎」どうやら名前のようだ


8.袖

もっと欲しい 求めまさぐる袖の下 愛を被った欲望の獣

9. 筍

チョコバナナ塗られていたのも過去のこと ついに焼かれる筍の里*2


10.たらちねの【枕詞】

たらちねの母還暦とその母の米寿祝いに回転寿司へ

 

 

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いま、わたしにとって

短歌を詠むということはひとつのシーンを言葉で切り取る創作活動で、

それと同時に、切り取りたいひとつのシーンを探す捜索活動でもある。

だから短歌のことを考えると、無駄だと思う時も損だと思うときもあんまりなくて、

暑くてだるい日もネタになるし、傘を忘れたどしゃ降りの日もネタになる。

 

今週のお題「雨の日が楽しくなる方法」。

わたしのおすすめは、だるさも憂鬱さもぜんぶまとめて、短歌に詠んでみることです。

 

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理想のあの人は現実に最も近いファンタジー

石井ゆかりという占いをするひとが好きで著書を何冊か持っている。

 

3年の星占い 牡牛座 2015-2017

3年の星占い 牡牛座 2015-2017

 

 

彼女の占いは好きだし参考にしているのだけど、実は彼女のいちばん好きなところは彼女自身が占いを信じていないというところだ。

本の中にも必ず一言、「私は占いを信じていません、信ずべき根拠がないからです」

というような文言が入り、「占いは非現実的で、ファンタジーのようなもの。

でも私たちは時にそれを求めたくなり、時にちょっとだけ救われたりもする」と続く。

 

(余談だけど最近読んだ「3年の星占い」のあとがきにあるQ&Aコーナーみたいなところが面白かった。)

”私の占いには「この時期にはこれをしたほうがよい」というようなアドバイスはありません。「この時期、あなたは新しいことに挑戦するでしょう」と書いてあったとしても、あなた自身がそれをしたいと思えないならば、無理して占いに合わせるなど、ナンセンスだと思います。

 たぶん「うるさい!私に指図するな!」というくらいの主体性を持っていたほうが、人生はおもしろいのではないでしょうか。そして、そんな反骨精神を持ちつつも、「少しだけ、未来を占いで覗いてみたい」という、繊細なファンタジーも秘めているがゆえに、人は人に優しくなれるのではないかとも思うのです。”

 

 

 

話は変わって、数日前、以前憧れ尊敬していた人ととある集まりで再会した。

彼は以前(といっても半年くらい前)はあった覇気のようなものがすっかりなくなり

仕事に疲れている様子で、ついでに仕事に対するやる気もなくなっていた。

環境の変化もあり忙しくて疲れているのだろう、とわたしは自分を納得させようとしたけど、

どうしてもうまくいかなかった。

正直がっかりして、悲しくて、自分のやる気もなくなって、そしてそんな風に思ってしまう自分を傲慢だな、と思った。

わたしが思い描いていたのは自分で勝手に描いた理想のその人なのに、

それはいわばファンタジー世界におけるキャラクターのようなもので、

目の前に現実に存在するその人そのものではないのに。

 

頭ではわかっている。それでもわたしはどこかで期待していたんだ。

どこかでファンタジーを信じていたんだ。

でも現実と向き合わなきゃいけなくなった時、いったいどうすればいいんだろう?

わたしはこれから一体、誰を追いかければいいんだろう?

 

ぐるぐるしばらく悩んでから、まあいいや、って思った。

別に現実世界だけに生きなくてもいいや。

非現実だって、わたしが憧れた理想は確かにそこにある。

わたしはそれを追いかけよう。たとえ別人だったとしても。

 

そうすることで、わたしは少しだけ救われるから。

 

 

 

 今週のお題「最近おもしろかった本」(ひさしぶりにお題に便乗)

プレイスタイル

 

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最近のDDR。(最近は体調も良くなりつつあるのでまた時々行くようになった)

 

DDRは小学生の頃にほんの少しだけ家庭用ソフトで触れたことがある。

その時いちばん好きだった曲がダイナマイトレイブという曲で、それが今でも

アーケード版に入っている。素敵だ。

ただ何故かこの曲、プレイするとGREATという最適タイミングからズレた判定

ばかりが出るので、いっそのこと合うところもわざと全部ずらして

全部GREATを目指してみた。のが左の画像。フルコン(MISSが0)なのにスコアがめちゃ低い。

 

一方で、プレイヤーとしてももうちょっと上手くなりたいので、

今までプレイしたことない曲とか、自分ができるギリギリの難易度の曲とかにも

ちょっとずつ挑戦している。のが右の画像。

 

 

DDRを再開した(というかアーケードは初めてプレイした)きっかけは、

とあるDDRパフォーマンス動画を観たからだ。


PSSP2011 パンダさんチーム / Panda-San Team - YouTube

 

DDRというゲームは、ただ矢印に合わせて踏むだけのゲームじゃなくて、

もっと色々なプレイができる可能性のあるゲームなんだ、って思えて興味を持って、

何より動画の二人みたいに楽しくプレイしてみたくて再開した。

 

 

DDRパフォーマンスの影響も受けているので、

時々回転してみたり手を使ってパネル押したり、といった変なプレイもする。

 

わたしはそれらを全部中途半端にちょっとずつ齧ったプレイをする。

それらはなにひとつ完成されていなくて、

それゆえにそれらに対してわたしは時々自問する。

「お前はいったい何がしたいんだ」と。

上手くなりたいのか、ネタプレイをしたいのか、パフォーマンスがしたいのか。

問い詰めても、わたしには答えが出せない。

 

そのことに苛立ったりもしたけど、あるときふっと気がついた。

たぶん、ぜんぶやりたいんだ。

たぶん、どれかひとつじゃ物足りなくて、色々なプレイをしていたくて、

色々なプレイをしているんだ。

そして、それらがぜんぶ楽しいから、こんなに長続きしてるんだ。

 

色々なんでも面白そうだと思ったら片っ端からやっていくプレイスタイル。

専門性の薄いそのスタイルは時に存在意義すらぐらぐら揺れてしまうけど、

そして極めるにはどこまでもハードルが高いけれど、

それでもわたしはやってきた。そして興味が続く限りこれからもやっていく。

きっと存在意義とか自信とかそういうものは、

やってきた後にふと振り返った時に落ちてるものなんだ。今は見えなくたっていい。

 

なんて、自分に言い聞かせながら。

今日も不安定な人生ゲームをプレイしていく。興味のある方にサイコロを振ってすすむ。

わたしカメラ(「短歌の目」第3回)

こんにちは。5月ですね。

というわけで今月もいつものやります。よろしくお願いします。

 

tankanome.hateblo.jp

 

いつも引用スター、感想ありがとうございます。

ひっそりぜんぶ拝見し小躍りしています。

今回ももしお気に入りが見つかれば引用スターいただければ嬉しいです。

 

それでは。

 

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1. うぐいす

いま春の陽のなかにいる 木々の葉の色もあなたの声もうぐいす


2. 窓

窓越しに良く眺めてたその山の ひとつ向こうが次に住む町


3. 並ぶ

並ぶったって肉の量見りゃすぐわかる それはライス減らした大盛


4. 水

落ちていく 深い眠りは 水の底 暗く 静かな 波間に ゆらら


5. 海

俺のターン!カード発動!「尾を結ぶ」! 海馬(うみうま)達のハートのダンス!*1


6. かめ

大腸かめらの検査で飲む下剤なんでこんなに不味いんだろう*2


7. 発情

想人 発見次第 脈拍上昇発情 ”心”覚醒


8. こい

コツコツと集めた札で上がるまで あとは君だけ 春よこいこい


9. 茜さす

茜さす君は夜こそ花開く 月夜の頬紅いとをかしげに


10. 虹

去り際に涙の雨を置いてきた 山の向こうは虹色の町*3

 

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自分の頭だけで突っ走って考えるとワンパターンになりそうな気がしたので

今回は事前に他の方々の前々回の作品を読んでから詠みました。

 

その中で、現実なのか空想なのかわからないけれど

とても印象的な情景を切り取っているような短歌があって、いいなあと思うと同時に

短歌を詠むというのはワンシーンを言葉で切り取るような作業なんだなあと

感じました。それはまるで、皆それぞれが持っている「わたしカメラ」のシャッターを切るように。

 

わたしカメラのベストショットが、少しでも誰かのフィルムに焼き付けば幸いです。

 

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*1:

遊戯王」という漫画のキャラクター「海馬(かいば)」と「海馬(うみうま)」=タツノオトシゴをかけてみました。

*2:実話。

*3:2の短歌の続きっぽくしてみました。

きっとそのために言葉を書くんだ

朝食後に飲む薬が6種類に増えた。痛みが酷ければ7種類。

ざーっと勢いで飲み干して、ぼーっとする。

 

具合悪いって書きすぎるとどうしてもかまってちゃんになってしまう気がして

他のSNSには具合悪いってことあんまり書かない。

けどブログはやっぱり個人的にパーソナルスペース感が強いのがあって、

どうしても弱音も本音も書いてしまう。

 

4月24日が誕生日で、リアルの知り合いには何人か祝ってもらったりしたのだけれど、

その日も既に具合はギリギリで、26日は仕事早退して、27日はなんかつらくて自分の中の勇気を振り絞って仕事を休み病院に行った。

具合が悪いことよりも仕事を休む方に勇気が必要なタイプなのでがんばった方だと思う。

病院に行くのもあまりにつらくてふらふらしながら言ったらお医者さんにつらかっただろうね、かわいそうだったね、って言ってもらえて、

なんかそこではじめて誰かに自分の状況をわかってもらえた気がしてちょっぴり泣いた。

 

元々IBS過敏性腸症候群)っぽいなあと思っていたけどもっと別の大きい病気でも困るし、検査入院することになった。

入院中について、詳しくは

hakoniwa-no09.hatenablog.com

このへんに書きました。203号室という部屋番号でおばあちゃんに囲まれながらネガティブしてたとこらへんはノンフィクションになります。検査で悪性腫瘍見つかるとかは思ってなかったけど。あと別に母親とは仲良いしファーストフードでは働いてないです。

でも元子ちゃんがんばれって感想は素直に自分のこと励ましてもらえたみたいに受け取ってまた泣きそうになりました。ありがとうございます。

 

 

退院してからいろんな人におめでとうって言ってもらえたけど、

結局検査に異常がなかっただけで腹痛については改善されておらず、

処方された薬も長期的に服用しないと効いてこないらしく、

今は大体朝昼晩の一日三回毎日腹痛がくるので、薬をのんで対処する。

対処はできるようになった。最近は固形物も食べられるようになった。

 

よくなってきている。はずなのに、まだまだ普通だった生活には戻れない。

そう思うとどうしても不安が拭えなくなる。

 

でも今日、用事のついでにふらりと寄った本屋でふらりと読んだ星座占いの本に

牡牛座のあなたが将来に不安を抱くのは、人と自分の進み具合を比較して「自分が出遅れている」と感じた時ではないでしょうか。しかし「速さ」は物事の1つの側面でしかありません。そこではかれないものがたくさんあるのです。

って書いてあって、

それが当たっているとかそういうことより、気にすんなよ大丈夫だよ、って

言ってくれたことが嬉しくてつい買って帰ってきてしまった。

牡牛座への贈り物

牡牛座への贈り物

 

 これ。(貼っただけで、アフィリエイトじゃないです)

 

 

「おめでとう」とか「つらかったよね」とか「無理すんな」とか「大丈夫」とか、

きっと具合悪くなかったらこんなに響かない。

自分の誕生日、実はあんまり興味がなくて、その日だけの「おめでとう」とかって

意味あるのかな、なんて思っていたんだけど

きっと他の誰かも、具合が悪い時があって、死について考える瞬間があって、

誕生日が嬉しい瞬間があって、ただのおめでとうが特別なおめでとうに聞こえる瞬間があって、

きっとそのために言葉があるんだ。

ありふれていても、当たり前のようでも、きっと伝わってほしい誰かに伝えるために

みんなおめでとうって言うんだ。わたしに伝えてくれるんだ。

 

 

元気な時だと思えることが、元気じゃないと思えなくなったりするから。

ありふれたただの日記が、もしかしたら誰かの心に響くかもしれないから。

だからわたしも、できればもうちょっとたくさん、書いていけたらいいな、と思う。

広大ないんたーねっとの片隅で。今この瞬間のわたしが思う言葉を。

未来203号室(短編小説の集い「のべらっくす」第7回参加)

こんにちは。短歌の目でお世話になっている方はお世話になっております、

きゅーいんがむと申します。今回はこちらの企画に参加してみます。

novelcluster.hatenablog.jp

 

本当に短いSSとかなら書いたことありますが、短編小説というものをまともに書くのはたぶん初めてです。

実は今日まで4日間検査入院をしてまして、入院中に暇な時間ができたのでノンフィクションの上にフィクションマシマシで書いてみました。文章中拙い部分多々ありますがよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

「未来203号室」


1.

ピンクのカーテンが見える。ずっと遠くに天井が見える。
それから、ピンクのカーテンと天井の間に、わたしの命の天秤が見える。

まだ意識が朦朧としていた元子は目覚めた瞬間そんなことを思ったが、パックから落ちてくる水を眺めているうちに覚醒してきて、その想像を頭から消す。

(いやいや、ただの点滴だし)

元子は体を起こす。
今日は検査入院の三日目で、昨日大腸カメラの検査をしたばかりだから、今日は大きな検査はなく体調を整えるだけのような一日だ。

(うーん・・・・・・暇だなー)

体を起こし、ひとまず配膳される朝食のためにテーブルの上を片づけたりはするけれど、朝食後の予定は何もなく、
点滴はさっき寝ぼけながら繋がれたばかりなので出来ることも少ない。

(まあ、とりあえず)

ご飯を食べることにしよう。
そうすれば、少し元気が出るかもしれないから。




2.


「オーダー入ります!Mサンド1、ポテトSが3!」

柿崎はカウンターから厨房に声を張り上げる。
厨房からは「あーい」と頼もしい男の声が聞こえ、
何やら作業をはじめている。
柿崎は厨房から再びカウンターに向きなおり、

「ただいまご用意しておりますので、隣の列に詰めて少々お待ちください」

と客に接客スマイルを向けた。
客の高校生くらいの女の子とその母親は素直に隣の列に移動したが、女の子はカウンターの奥をじっと見ている。

(あー、急いでるのかな)

女の子の様子を見た柿崎は自らポテトを揚げている場所に向かい、揚がった瞬間素早くSサイズのポテトを作り上げる。
他の技術はともかくとして、誰より素早く正確にポテトを詰められる自信だけはあったし、周囲からも評価されていた。

「Mサンド1オッケーでーす」
ちょうどサンドができたところでポテトも詰め終わり、
柿崎はそれをトレーの正しい位置へ素早く並べ、客に渡す。

「お待たせいたしました」



3.

「どしたのお母さん、不服そうな声して」
「そりゃ不服だわよ。もーちゃん、あなたもう高校生じゃないんだから、いつまでそんなことやってるつもり?」
「お母さんこそ、そのもーちゃん、ての、やめてよ。
もう高校生じゃないんだから」
「口答えはちゃんと稼いでからか、稼いでいる男を見つけてからにしなさい」
「仕事はしてるよ!」
「ふーん? ・・・・・・でも正社員じゃないんでしょ?」

うるさい!うるさいうるさいうるさい

その言葉にもーちゃん、と呼ばれた彼女はカッとなり、
携帯電話を投げつけたい衝動を必死に抑えた。

正社員じゃなければ、仕事しちゃいけないの!



4.

決して不味かったわけじゃなかったのだが、配膳された朝食に元子はほとんど手をつけられなかった。
食べる前までは食欲があったのに、いざ食べ始めると吐くほどではないが気分が悪くなり、かといって食べなければ処方された胃腸薬も飲めない。
なんとか味のないおかゆを少しだけ流し込み、煮物のじゃがいもを少しだけつまんだ。

「うー・・・暇どころじゃない」

せっかく検査のない一日だというのに。
元子はなんとか少量の食事と薬を済ませると、ゆっくりとベッドに横になった。
出来る限り楽になる体勢をとると、やがて意識も遠のいていった。

(ああ、私に、未来は、ないんだ)

病弱でネガティブが加速した元子はそんなことをぼんやり思っていた。


5.

ピンクのカーテンが揺れる。
お小言を聞くだけの通話が終わった後、もーちゃんは思いっきりベッドの上に携帯電話を投げつける。

「なんなの、もー!」

もーちゃんは怒っていた。

「そんなところで働いていてどうすんのとか、正社員になる気がないなら結婚しろとか!」

携帯電話はベッドの上をワンバウンドし床に落下した。
もーちゃんはちょっと慌ててそれを拾い上げる。

「・・・・・・なる気はあるけど・・・でも・・・・・・」

心配する母親の気持ちも少しは理解しているつもりだった。でももーちゃんにはそうできない理由があった。

「先輩・・・・・・」



6.

再び、ピンクのカーテンが揺れる。
そこにはファーストフード店の制服姿の柿崎と、サブマネージャーというバッジをつけた大柄の男がいた。

「いやー、柿崎、お前にはほんと助かってるわー」
「そうですか?」
「おう、オペミスもないし。次昇級試験あったら受けてみてもいいかもな」
「まじすか」
「おう。・・・・・・ま、すぐに正社まではいけないかもしれんが」
「・・・・・・ですよねー」



ピンクのカーテンの隙間から、命の天秤が見える。
パックの水は半分を切り、滴は落ち続けていく。
未来は残り少ない。


7.

「・・・・・・ん、ねてた・・・・・・」

元子は目元にティッシュを当てながらぼんやりと思い出す。
ああ、もーちゃんと柿崎の夢を見ていた。

「・・・・・・夢・・・・・・」

いつまで夢を見てるんだろうな、と元子は思った。



ピンクのカーテンが揺れる。

「・・・・・・ほんと80過ぎたら、急激に体ダメになるわよねー」
「そうねー。私も主人が亡くなって一周忌のときに80だったんだけど、そこから急に体悪くなってしまって」
「一人暮らしに戻ったら何でも出来ると思ってたけど、体がダメになっちゃどうしようもないわよねー」

今度は夢の中の声ではなく、
元子が入院している病室203号室に入院している人たちの声だった。
203号室は元子の他に80歳から90歳くらいのおばあちゃんが4人いる。完全に輪に入れない元子は、隣のベッドの住人がヨシカワさん、という名前であること以外よくわかっていない。


(・・・どうしようもない)


8.

桃山は、柿崎の憧れの先輩だった。
アルバイトとして入ったばかりの柿崎を丁寧に教え、育て、時に冗談を交えながら彼女をよく誉め、そして職場の人間の中で唯一、柿崎を下の名前で呼んだ。
しかし順調に昇進し店長となった彼は、ある日他店に異動になった。

「もとこ、後は頼むな」

彼が最後に残した言葉を、柿崎元子は必死に守った。
少しでも憧れの先輩に応えるために、正社員でもないのに同じように働いた。胃痛で倒れるまで、自分の労働時間もよく把握していなかった。


9.

(ばかみたいだ。私)

元子は親に駄々をこねるばかりの「もーちゃん」と、
正社員になれるかどうかもわからない
憧れの先輩に近づけるかどうかもわからない「柿崎」を
必死に抱えて生きてきた。
けれどどうすることもできなかった。

(どうしようもない、夢を・・・見ていたんだ)

憧れの先輩にも近づけない。
正社員にもなれない。
母親とも仲良くなれない。
体がダメになったら・・・・・・もう、どうしようもない。

(きっと明日の胃カメラで、悪性腫瘍が見つかったりするんだ)

そしたらもう、先輩との約束も守れない。
でもそれ以前に、もう。

元子は点滴のパックを見つめる。もうすぐ液体がなくなろうとしている。

(命が尽きたら、死んでしまったら、元も子もないんだ。『元子』はどこにもいないんだ。私は一体……何だったんだろう?)



10.

胃カメラで特に異常は見つからず、元子はストレスを要因とする過敏性腸症候群と診断された。
適切に治療すれば治るといわれている普通の病気。
死を覚悟していた元子は拍子抜けする診断書を受け取りながら、再び病室に放り出された。母親が迎えに来る退院予定時刻までの間は待機していなければならない。

「うーん・・・・・・暇だな・・・・・・」

もはや手首に管はなく、命の天秤などない。
それでも自分は生きているし、生きられる。

それがわかってしまってからは、いろんなことがどうでもよくなってしまった。

体がダメなら、どうしようもない。
けれど、裏を返せば、体がダメじゃないなら、どうとでもなる、のだ。

(ああ、どうしよう、これから)

がむしゃらに仕事続けてたってだめだ。
ただ母親に反抗していたってだめだ。

(桃山先輩)

本当は、仕事が好きな訳じゃなかった。

元子が、本当に好きだったのは。

(まずは、伝えなくちゃ)

桃山先輩への想いを。
そしてその次は、どうしよう?

(・・・・・・そのとき、考えよう!)

元子はベッドに放り出されていた携帯電話を拾い上げた。

 


11.

とあるひとつの病室で、
とある夢や未来が壊れて、
でもそれはまた治療されて、
やがて送ったメールに返事がくる頃、またひとつ病室のベッドが空く。

ベッドから動き出す患者がいる限り、本物の命の天秤が尽きない限り、
未来は何度でも、退院という形で描かれる。


はむすたーでいず

今年一年は毎月何かしら2つのイベントを起こす、もしくは、何らかのイベントに参加するということを目標にやってきていて、

一月は初めての円山動物園と某イベントの見学、二月は初めての雪まつり一周見学と帰省(このへんのことは今度書きたい)と短歌の目に参加しはじめたこと、三月は仕事関連のとあるお誘いにOKしたこと(何かその後人員の都合で保留になってしまった)と職場の飲み会に二次会まで参加したことが大体それにあたり、

今月前半は某カラオケ用スタジオと半月間固定料金で契約し、半月ほとんど歌いに行ってた。

 

仕事の後どうしても家でぐだぐだして終わってしまう一日が嫌で無理やり趣味の時間をつくるという思惑ではじめたのだけど、結果的に固定料金以外の移動とか食事とかのお金がけっこうかさんだり、ただでさえ仕事でけっこう体力を消耗していたのにさらに疲れて体調崩したので今回だけでやめることにした。

毎日仕事帰りに歌う場所があるというのは毎日の楽しみができて良かったのだけどやっぱり体調にダイレクトに来ると歌っても調子が出ないので断念残念。

 

今月ふたつめのイベントとしては、職場で仲良くなった人のお家にお邪魔してきて子猫二匹とふれあってきた。超かわいかった。

うちの猫こと同居人のあいるさんも連れて行ったのだけど、わたしが猫じゃらしを振ると二匹に混じって掴もうとしてて超かわいかった。

あと近くの有名なスープカレーのお店に行ったのだけどスープカレーはさることながらキウイラッシーが美味しすぎてHNをキウイラッシーに改名しようかと思いました。しかしきゅーいんがむの時点でふざけた名前なのにキウイラッシーはもう完全にネタみたいな名前なのでやめました。断念残念。

ちなみに職場で仲良くなった人たちが本当にもう超仲良しのリア充カップルだったので、二人がじゃれあってるのも超かわいかったです。

 

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実はここ一週間かつてないほど具合悪くて固形物食べられなかったり朝職場まで歩いて行けなくてタクシーで通勤したりしてたのですが(職場に着くとちょっと調子よくなるので仕事はできる)、本当にしんどいとやっぱり気持ちもしんどいしわたしはメンタル弱い人間なので不調になるとすぐ「わたしって何かできてるのかなあ…」みたいに思ってしまうのですが、今冷静に書き出してみると今月今年かなり活動していたし、仕事なんかでもそれなりに成果残せてるし、わたしいろいろできてるんだから多少調子わるいときあってもオッケーじゃん、みたいな気持ちをもう少しもってたいなあとかそんなことを思いました。

 

 

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超一流は、結果が出なくても「頑張らない」 | オリジナル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

今日ホッテントリにあったので見たこの記事の中に、

「調子が悪いこと=悪」という意識が強すぎるのかもしれません。

という一文があったけれど、わたしもこういう意識が強すぎるのかも。

結果に波はあっても、全体で見てきちんと上がっていればOK。そんなスタンスです。

という風に考えていきたいな。

 

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中学生のときに人生ではじめてつくったブログは「はむすたーでいず」という名前だった。

ハムスターを飼っていたわけじゃない。飼っていたわけじゃないので、ハムスターといえば回し車をずっと回しているイメージしかなかった。

回し車を回すみたいな変わらない日常だけど、螺旋を描くみたいに、少しずつのぼっていけたらいいなあ、と思ってつけた名前だった。

今思えばその頃がいちばん”全体で見てきちんと上がっていればOK”なスタンスだったのかも。

 

10年以上前のわたしよ、わたしは今もハムスターだし、あなたは全体で見ればきちんと上がっているから、大丈夫。多少調子わるくてもおっけーおっけー。